僕は大谷翔平じゃないことに気付いたので介護用のマットレスを買った

マットレスを探し始めて3年が経っていた。

 

といっても3年間ガッツリと探し続けていたわけではなく、なんとなく「いいマットレスが欲しいなぁ」と考え始めてから3年だ

 

家具屋に入った時は必ずマットレスの展示をチェックした。

ショッピングモールに行った際も展示があるならくまなく周った。

 

しかし…なんかこうシックリと来るものが無い日々が続いていた。

 

 


少し時を戻して「いいマットレスが欲しい」と考え始めた経緯を書いておこう。

 

齢30を数えようとしていたとある日、スポーツをしている時にギックリ首をやってしまったのである。


首がひん曲がったまま病院にヨロヨロと駆け込み、何とかその場は助かったものの問題はその後襲ってきた。

 

翌日起きたら激痛でとてもじゃないが起き上がれなかったのだ。

 

寝てる体制から起き上がろうと思ったら必ず頭を持ち上げなければならない。


腰から下は何とか動くものの、それより上の部位を動かそうとすると首に負荷がかかり、激痛で全く持ち上がらない

 

救急車を呼ぼうか呼ぶまいか悩みながら頭をフル回転させていたら、その時あるキャラクターのことを思い出したのである。

 

そのキャラクターとは『ジョニィ・ジョースター

ジョジョの奇妙な冒険・第7部である「スティールボール・ラン」の主人公だ

  

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この状態のジョニィと自分を重ねた


ジョニィ・ジョースターは将来を有望される稀代のジョッキーとして有望視されていたが、不運にも交通事故にあってしまい下半身が動かなくなってしまった。

 

そんなジョニィ・ジョースターがまた馬に乗れるようになったエピソードをご存じだろうか?

 

『回転の力を信じろ』

 

本作のもう一人の主人公、ジャイロ・ツェペリに導かれ、ジョニィ・ジョースターは回転の力を利用して馬に乗ったのだ。

 

 


拡大解釈すれば、今の僕はあの時のジョニィ・ジョースターと似たような状況じゃないのか?

 

今こそ回転の力を信じる時じゃないのか?

 

上半身を動かさなければ激痛は襲ってこない。足で周囲を捜索するとそれはあった。

大きなビーズクッション…!

 

足で掻き寄せ、壁面に出来るだけ大きなRを描くようにビースクッションを押しあてた。


『回転の力を信じろ!!』


そう頭の中のジャイロ・ツェペリが叫んだ次の瞬間、僕はクルクルと回転しながら上半身を持ち上げることに成功したのである。

 

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記事を書いてから当該のページを見直したんだが、割とそのままだった

 

その後また無事に病院に駆け込むことができ、事なきを得た…そんな経験から僕は健康のために寝具もこだわろうと思い始めたのだ。

 

 

 

話を戻そう。


いいマットレスを探すと真っ先に思い当たるのは各種メディアや大型の寝具店で宣伝されている製品だろう。

 

エアー○ィーヴ、A○R、、マニ○レックス、etc...


その横にはこんな文字が躍っている。

 

「大谷○平推薦!」

「錦○圭推薦!」

「浅田○央推薦!」

 

要するに超一流のアスリートは最もその身体を酷使しており、同時に最も身体のケアにこだわっているはずなわけで、その超一流のアスリートが推薦するものが一番良い寝具に違いないという宣伝の理屈である。

 

道理である。

 

道理であるがちょっと待って欲しい。

 

どんな商品にも必ず開発コンセプトというものがあるはずなのだ。

 

例えば男性用・女性用、人種も違えば性質も大きく異なる。
また、各種スポーツやレジャーといった対象を何に置くかでも当然大きく異なってくる。

 

「商品開発にはペルソナを設定しろ」とはよく言われるように必ずターゲットを置く必要があるのだ。

 


今回の場合、宣伝が打たれている寝具に合っているとされるのはいずれも若い超一流アスリートである。


それでは画面の前の皆さんは自分の体形を鏡の前で確認して欲しい。


超一流アスリートか……???


以前陰キャオタクがゴルフを始めてしまった際のスタートアップガイドの記事にも書いたが、我々陰キャオタクはそもそもの話でスポーツマンの体格はしてない。

 

mekasue.hatenablog.com


どちらかというと老人、またはせいぜい体格の良い女性に近しく、ガッチリしている人は少数派だろう。

 

仮に防寒を目的とした装備を整える…とかいったケースであれば極地とも言える「山用の装備」を整えるのは分かる。


何故なら「防風や防水」といった要素は付与してデメリットを生じさせる要素が特に無く、何より「暑かったら脱ぐ」という選択肢もあることから「大は小を兼ねる」という理屈が通るからだ。

 

ところが寝具となればそうはならない。


受け止める対象が異なれば全く別の答えが出てくるはずだ。

 

寝具というジャンルでは体格を寄せた方がいいので…「中年男性向け」があればそれだろうか。

 


と、なれば中年を宣伝塔に立ててる寝具ならばあるいは?と探ってみたところ、高反発マットレスでおなじみの「モットン」は元プロ野球選手の山本昌を宣伝塔に起用していることが分かった。

 

知らない人に説明すると、山本昌とは中日ドラゴンズ一筋で齢50歳に至るまでプロ野球選手を続けた、いわば身体のケアに関しては超一流の野球選手である。

 

一瞬「これか!!」と思ったものの、山本昌の身長は186cmでガッチリ系…

 

大分近づいたものの、陰キャオタクの体格とは一線を画している。

 


と、なれば我々に最も適した寝具…それは最早介護用品のジャンルではないか?と考え始めた時に彗星のように現れた。

 

それこそが今回言及する『ジェルトロン』だ。

 

geltron.jp

 

『ジェルトロン』はその名の通り、立体格子状のジェルを主体とした寝具シリーズの総称である。

 

残念ながら僕が彷徨っていた家具屋では並んでいるところを見たことが無かった。

 

どこで初めて見たかというと…なんと『東京ゲームショー』である。

 

t.co

 

様々なゲーム用品が並ぶ中で寝具をデカデカと展示する異質な存在。
また驚くべきはその展示内容であった。


「このジェルトロン枕はバーチャルリアリティ(VR)用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)をつけたまま快適に睡眠をとることができます。」

 

もう一度書いておこう

 

「このジェルトロン枕はVR用のHMDをつけたまま快適に睡眠をとることができます。」

 

実に3歩は先の宣伝文句である。

 


我々VR愛好家、特にVRChat界隈の人間では割とポピュラーとも言われる「VR睡眠」ではあるが、正直なところ一般社会では確実に理解どころか認知にも至らない領域である。

 

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お昼寝や仮眠も多いが、普通に夜中グッスリの人も割といる

 

2019年に「VR睡眠が快適に出来ます」を販売文句に使う会社が中途半端なモノづくりをしているとは思えない。

 

恐らくアマゾンの奥深くの少数民族を相手に商売するよりターゲットが狭い。

とてもじゃないが正気の沙汰ではない。

 


商品カテゴリもまさに「介護用品」だ

 

素晴らしい!

 

僕の求める製品コンセプトじゃないかと公式ホームページを眺めていると更に凄まじい宣伝文句が流れてきた。

 

「プロゴルファー藤田寛之さんも愛用!」

 

なるほど!!!と膝を打った

 

オタクゲーマーはご存じ無い可能性が高いが、藤田寛之は40歳を超えて初めてメジャータイトルを獲得する等活躍した苦労人の名プロゴルファーである。


まさに「ゴルフ界の山本昌」といっても過言ではなく、50歳を超えた今でもプロツアーで活躍しているこれまた身体のケアの達人である。

 

そして何より身長が…168cm!!

 

全ての要素を兼ね備えたオタクご用達商品…これは買うしかないと心が揺れ動いた。

 


ただマットレスはお値段がかなり凄い…

(スーパーエクシード シングルタイプでお値段17万円也)

 

どこかで体験出来ないかなと県内に設置されてるという店で聞いてみても「以前は展示していたのですが…」と返ってくるばかり


と、なれば第1段階。


先にジェルトロン製の枕と座布団を買う事にした。

 

早速届いて使用してみるとなるほどこれが存外いい。

 

よくこういった寝具類では「体圧分散性」という項目が言及されるがどういった状態か皆さんご存じだろうか?

 

地球上での究極の体圧分散状態とは恐らく水に浮いてる状態である。


ジェルトロンを使用している時はまさしく「浮遊」しているような状態を体感できたのだ。

 

レビューでも「寝返りが減ってしまった」という意見がマイナス側にあったが、むしろそれは優れた圧力分散性の証明じゃないだろうか。


寝返りは本来睡眠中に一部の血管を圧縮しすぎるのを避けるための身体の仕組みである。

 

では人は無重力中でも寝返りを打つのか…?


答えは宇宙飛行士が知っていた。

 

 

相手が低反発素材の場合は圧縮されることで密度の極端な上昇が起こる。


一見して体圧が分散出来てはいるが、相手の素材の硬度が一様でなくなってるのである。


一方ジェルトロンは独特な立体構造とジェルの硬さで見事な体圧分散の一様性を実現させている。

 

冒頭で書いたように回転の力はもの凄い力である。

 

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全ての希望は『回転』の動きの中にあった


睡眠中に強いられる寝返りという本来必要経費であるストレスを極端に減らすことが出来のは大きなアドバンテージだと推測できるのだ。

(結局ジェルトロン枕の弱点は『高さ調節シート1枚で全然寝心地が変わる』くらいだった。中の高さ調節シートは合わなければすぐ抜いちゃっていい)

 

 


このジェルトロンの浮遊状態を体感して「まさか究極のベッドとは理論上水製、つまりウォーターベッドではあるまいか?」と検索してみると、たしかに理想的と言及されている記事がチラホラと出てくる。


しかし浮かび上がってきたのは「ウォーターベッドの問題点」の方だった。

 

海外では根強い人気のあるものの、日本ではすぐに廃れてしまった。

 

kaimin-times.com

 

その理由は重量、大きさ、管理、廃棄、温度、価格であった。

 

優れた体圧分散性と寝心地誇るのは間違いないが、デメリットの数々があまりに巨大すぎる。


何よりアパートじゃ選択肢にも入らない。
実質的に導入は不可能だ。

 

総合判断をすれば…考えれば考える程ジェルトロンマットレスが理論上最適解にしかならなかったので次の週にはポチってしまった。

 


いざ開封

通常巨大なマットレスを家の中に輸送するのは一苦労であり、特にスプリング製の折りたためないものは輸送が不可能に近い。

 

ジェルトロンマットレスも普通に輸送すればとてもじゃないが入れれない大きさだったが、玄関先でダンボールを開けてウレタン部分とジェル部分x3に分けて運べば狭い部屋へも余裕で輸送可能だ。

 

e-Mosシステムで事前に設定したジェルの硬さ順に並べて設置も簡単。

(216種類とうたっているが、結局尻が一番大きく、足部分が軽いので設置パターンは6種類+αだろう)

 

geltron.jp

 

ジェルトロンマットレス自体は好通気性をうたっているが、流石に地面に直置きだと通気が悪いので、ベッドが無い場合は下に「すのこ」を敷くことをオススメする。


まず驚いたのは一踏目…寝る場所に足を踏み入れると凄まじい沈み込みと反発力が感じられる。


しかし下に敷いているはずの「すのこ」の存在自体が感じられない。

 

ニ○リのマットレスの上に布団を敷いて寝てた時は布団を足で踏むと下のすのこがミシッと音を立てるのに、飛び乗っても音すら無い。


次に驚いたのが寝た時…スプリングやウレタンのマットレスで寝た時とは異なり、身体全体が沈み込まず浮いているような感覚がある。なおかつお尻部分は凹んで包み込んでくれている。

 

レビューとは異なり、身体の回転もかなりしやすい。


身体が全体的に浮いたような感覚なので、沈み込むウレタン系マットレスよりもむしろ寝返りが楽である。

 

この感触で「寝返りが減る」のであれば…まさに身体への負荷が減少してる証拠だろう。

 


また、何より注目したいのが耐用年数だ。

 

大体の低反発マットレスは5年もしたら明らかにヘタって使い心地が変わって来るが、こちらの布団屋の店主レビュー曰く実使用で9年使用で大差無しとのこと。

 

www.marutokukagu.com


(しかも他の販売代理店よりちょっと安い)

 

販売元も強気で「1cmヘタりを10年保証」ときたもんだし、仮にジェルがヘタったとしてもパーツ毎の買い替えが可能らしいので省コストというわけだ。

 


とりあえず3週間寝てみたが…

 

隙が無い。

 

否定する点が特に無い満足製品であった。

 

唯一の注意点はマットレスの縦の長さだろうか。

僕の身長は178cmであるが「気持ち短いかな?」と思うことがある。
(マットレスの外周部はウレタンで、枕がでかかったらその部分に大体足が来てしまう)

 

また、マットレスの高さに関しては特別なこだわりが無ければ150mmで十分だろう。

 

 

人生の1/3はベッドの上で過ごすことになる。

 

皆さんも自分に合う寝具を探す旅に出るのは如何だろうか?