どうも、mekasueと申します。
以前ゼロからゲームコミュニティーを作ったHow toみたいなものを書かせていただきました。
今回は先日幕張メッセで開催されたEVO Japan 2020にて「キャサリン・フルボディ」のトーナメントを主催させていただいた際に、アメリカからプレイヤーを2名連れてくるという渡航支援計画を実行しました。
この経験を通して更に一歩先に進んだ気がしますので、考えた事をレポートにしてまとめたいと思います。
(渡航支援にご支援いただいた方への報告書を兼ねています。)
もくじ
◆ゲームの主戦場は"世界"へ
◆海外渡航支援の現状
◆渡航支援で発生しがちな論争
◆渡航支援を受けた人は何を成せばいいのか?渡航支援者は何を求めているのか?
◆今回のキャサリン勢のドネーションの場合は?
◆選手が『価値』を確立するには
後書き
◆ゲームの主戦場は"世界"へ
昨今は格闘ゲームがゲームセンターでの稼働を経ずに直接家庭用で発売するようになり、ネット対戦の環境も劇的に向上し、攻略も積極的に共有されるようになってからは世界中のプレイヤーの実力は拮抗しています。
実際大型大会でもネット対戦で研鑽を重ねたというプレイヤーがTop 8の壇上に登ることも珍しくありません。
以前は日本の地方で行われていた予選大会が世界各地で行われるようになり、東京で行われていた「世界大会」がアメリカや欧州で開催されることになり、カプコンカップや鉄拳ワールドツアーのような「ワールドツアー」という概念も生まれ、今や世界各地を飛び回って闘うことが当たり前の時代になってきました。
そこで大きな問題が生まれてきたわけです。
「いや、海外とか言われてもそんな金も暇もあるわけないでしょ!!」
はい、その通りですね。
私自身、学生時代は近畿圏内で「強い奴がいるらしい」というゲームセンター巡りをしてたり、もっと遠くに行くとなれば車を出してくれる人にお願いして同乗して連れて行ってもらっていたりしました。
仕事をしている現在では日程調整と根回しをして、毎年アメリカ・ラスベガスで開催されている「EVO」をはじめとした海外大会に足を伸ばせてはいるものの、もしも当時海外での大会が主流でそこに行く必要があったとしたらとてもじゃないですが行くことは出来なかったでしょう。
これは日本国内でなくて世界中のプレイヤーも同様の状態に陥ってます。
昨年鉄拳シーンにおいて「パキスタン旋風」を巻き起こしたArslan Ash選手を筆頭としたパキスタン勢が良い例ではないでしょうか。
日本においても地方においてとんでもなく優れたプレイヤーが生まれていても、様々な障害のせいで日の目が当たらないという状態に陥ってしまうというわけです。
◆海外渡航支援の現状
海外への渡航支援についてはいわゆる"e-sports"(宗教の関係でこの名称で今後統一するものとする)の市民権の獲得に伴なって世界中で増えてきています。
あまりよく知られてないかもしれませんが、私がよくプレイしている格闘ゲーム界隈に限って言えば、長らく日本国内のレベルの方が高かったために「海外勢に招待される」という事例が以前からありました。
そして先にも書いた通り、現在は主戦場が世界中に移行したために現在では世界中から選手を送り出したり招いたりするようになっているわけです。
渡航支援の企画自体は大会の規模によらず発生してますが、大規模な大会であればあるほどメディアの注目度も高まります。
そういう意味で「EVO」は格闘ゲームのイベントでは参加のハードルが低く、最も権威がある大会として扱われてますのでかなり多くの支援を見かけます。
また、大規模な大会に繋がる重要な大会での支援も多く行われているようですね。(カプコンカップ等のワールドツアーの高ポイント分配大会や一発勝負の最終予選等)
◆渡航支援で発生しがちな論争
さて、ここからが本題です。
世界に戦場が広がったことで、実力があるにもかかわらず金銭面的に余裕が無い人はどこかから渡航支援を受けるor企画する必要性があると思うのですが、毎回のように賛否が問われますよね。
よく見るのが「人の金で遠征したのに観光地と飯の写真ばっかり撮ってんじゃねぇ。旅行に行かせたわけじゃないんだぞ」みたいなの
これはチームに所属して渡航費を出してもらって行ってるプロゲーマーにも同じような批判が向くことが多いと思います。
僕は眺めながら「残念なことが起きている」と思っていました。
自分が支援を募る時にこんな気持ちのよくない事態はまっぴらゴメンだとも思っていました。
ここで発生しているのは「支援した人が求めていること」を「支援を受けた人」が正しく理解出来ておらず、逆に「支援を受けた人が成さなければならないこと」を「支援した人」が理解しきれていない故に発生していると考えてます。
◆渡航支援を受けた人は何を成せばいいのか?渡航支援者は何を求めているのか?
さて、皆さん『日本代表』という単語についてどういう感情を抱くでしょうか?
サッカーや野球といったフィジカルスポーツではおなじみですが、多分選手達に観客が求めるのは「自分達の強さを見せつけてほしい」じゃないでしょうか?
自らを『日本代表』という集団に一体化してる故の感情ですね。
勝ってもらわないと自分達が盛り上がらないのです。
では逆に世界から戦いに来てくれた(こちらも各国から支援を受けている)代表選手へ対してはどう考えているでしょうか?
「日本の文化に触れてもらって楽しんでもらい、その素晴らしさを発信してもらいたい」じゃないですか?
サッカーのクラブワールドカップのために来日している選手等が地下鉄に乗ったりしている画像が拡散されたりしているのも、それこそ格ゲー界隈ではアメリカの英雄Justin Wongが牛丼のTierリストを作成しているのが注目されるのもそういうことでしょう。
吉野家がリードし続けていましたが、最後に松屋に抜かれました。
— The Sentimental Typhoon (@Uni_Papapapa) 2018年9月15日
マゴさんお疲れ様でした、SCRは頑張って下さい。
<添付資料・格ゲー牛丼戦争勢力図(敬称略)>
吉野家勢:マゴ
松屋勢:ジャスティン、オバマ、大須晶、デネシス、Kane BlueRiver、キチパーム
味の違い分からず:ナウマン https://t.co/rNcpj7CFgG
ぶっちゃけ勝ったら勝ったで盛り上がるし、開催地の選手が活躍した結果負けたら負けたで盛り上がるのでそこまで重きを置かれないのです。
つまり、人によって、大別するとすれば『住んでいる地域』によって"価値"を見出す箇所が異なる。"支援する"理由が異なると考えています。
当然人の感情は一極集中していません。
ただ、平均化すると多分このぐらいじゃないかという図を貼っときます。
選手の居住国(地域)の支援者、開催箇所の支援者、その他の地域の支援者によってザックリ大別する形となります。
ここからは全て「日本選手」を例にして書きますが、
例えば日本からの支援を100%とする場合、最も重きを置くべきは「結果」であり、もしもそれを達成出来なかった場合はそこに至るまでにした思考や努力といった「取り組み」を共有していくことが全体として求められる"価値"であると考えます。
逆に海外からの支援を100%とする場合、最も重きを置くべきは「情報の発信」であり、求められるプレイが出来なかった場合でも場を盛り上げてそれが拡散されれば大きな"価値"になりえますし、コミュニティとの交流や次回移行に海外参加者が増えるような「取り組み」を共有していくことが全体として求められる"価値"であると考えます。
つまり、よく槍玉にあがってる「旅行してるんじゃねぇんだぞ」という写真のアップや現地のレポートは"価値"の一つだと確信しています。
支援を世界中の人から受ける場合はこれら全てを実行する必要が生まれてくるので、この辺を理解してない人がぶっ叩いている気はしますね。
(戦績も奮わず、盛り上げも失敗したのなら仕方ないとは思いますが)
支援をした人も受けた人もお互い納得のいく価値を提供し合うことができれば、次の自分への支援も集まりやすいかと思いますし、若い世代への支援にも繋がります。
逆に言えばこの価値の提供を軽んじているようであれば、今後二度と人から支援されることは無くなるでしょう。
結局は仕事と報酬の図式と同一になるのがなんとも因果な感じはしますけれども。
(特にフリーで仕事を受けている方には理解いただきやすいのではないかと思います。)
では、EVO2019でのドネーションと、今回EVO Japan 2020で実施したドネーションについて出資比率を見てみましょう。
まぁ分かりやすいぐらいそれぞれの地域100%ですね。
と、なればそれぞれの地域が求めていたことは主に「情報の発信」であったわけです。
EVO2019では海外勢に3名の日本人プレイヤーが招待されました。
皆さん初めてのEVOであることは当然として、海外自体ほとんど経験の無い人もおり、常にスケール感に圧倒されていました。
よく陥りがちなのはそのままホテルに閉じこもってしまい見聞を広められないことです。
招待いただいた現地勢の交流と大会出場は大前提として、現地の"楽しさ"を発信していくためには出来る限り様々な経験をすべきだと私は考えています。
ある人は実力はそれほどではありませんが、流暢な英語と日本語を使い分け、コメンテーターとしても活躍していることを活かして現地でコミュニケーションの中心役を担っていました。
ある人は実力者であり、大会で戦績を残しつつ、参加可能な現地でのアクティビティには全て参加し、恐らく初めてのEVOとしては時間の限り全て遊び尽くしていました。
ある人はやはり実力派それほどでもありませんが、若手プレイヤーとして積極的に色んな場に飛び込んでいき、様々な価値感を吸収して大きく成長していました。
私は多分、この3人は『各自が最大限に楽しむ』ことは成しており、渡航支援を通して求められたことはほぼこなしていたと思います。
ただ、最後にこれらの情報を十分に発信出来たかと言えばかなり甘かったと言わざるをえませんでした。
そういう意味で以前書かせていただいた記事は、海外勢の渡航支援へのお礼も兼ねた文章になっていました。
この辺は当然全員渡航支援を受ける事は初めてで、概念もよく分かってない状態でしたので私がもっと概念を事細かく共有しておく必要があったと反省しております。
さて、では今回のEVO Japan 2020での渡航支援はどうだったのでしょうか?
今回呼ぶ予定だったのは世界最強キャサリンプレイヤーのShasとEVO2019での渡航支援を企画してくれてオーガナイザーも務めていたLinusでした。
ただ、Linusが親族の結婚式と被っているということで、代わりに上位4本の指には入るSigというプレイヤーが指名されました。
彼らに我々が求めたのは何だったか?
やはり第一は「楽しんでほしい」であり、それを「発信していってほしい」でした。
「大会を盛り上げてほしい」に関しては、キャサリンの対戦強豪国であるアメリカの実力者に対して日本人が切り込んでいく構図が既に完成してましたので、彼らが勝っても負けても達成されるだろうというビジョンがありました。
また、今回EVO Japan 2020用に作製したプロモーションビデオもそれらを意識した構成にしました。
『キャサリン星人、襲来』
— mekasue (@mekasueBI) 2019年12月19日
"Catherian will attack Japan"
EVO Japan 2020にて『キャサリン・フルボディ』のサイドトーナメント開催!
2020/1/25(Sat.) Start:15:00~
米国から宇宙最強プレイヤー"Shas"が来日‼
今年もゲストにあの人が…⁉
豪華賞品有り、参加賞有りの全部盛り!参戦待ってます! pic.twitter.com/boUHdKTH74
そんなこんなで既にほぼ"土台"が完成していたので、僕らがやることは彼らが滞在で不自由しないことと、日本文化に触れてもらうことぐらいですね。
私は徳島在住と地方暮らしなので関東在住のプレイヤー達にその辺は全部任せ、大会運営へと注力しました。
幸運なことにこれまで積極的に活動してきたことを評価していただき、EVO Japanのサブステージを使用させていただいて、アメリカ勢の圧倒的強さを発信出来たのは正直上手くいきすぎたと思うくらい上手くいってしまったのは怖いところですが
先日のEVO Japanで行われた「キャサリン・フルボディ」トーナメントの激戦をアップしました!
— mekasue (@mekasueBI) 2020年1月31日
試合の模様はYoutubeにて!https://t.co/5WRA39KVqN
毎週土曜日 朝9:00頃から『カジュアルマッチ』での対戦会、「朝キャサ」やってます!
5月には東京での大会も開催予定です! pic.twitter.com/qeLHYFoeZZ
また、このサブステージ配信を行うために超速度での設営と運営を進めて場を回す必要があったのですが、達成可能なだけの役者がこの2年で揃ってくれたことにも感謝致します。
この美しい写真は間違いなくキャサリンの対戦シーンにおけるマスターピースの一つだと思います。
EVO Japan2020 Catherine Fullbody pic.twitter.com/BHozj0Kxgj
— mekasue (@mekasueBI) 2020年1月26日
今回の渡航支援に協力していただいた
MSTさん
セリーナさん
Genkiさん
リノさん
江戸川さん
れざさん
kimさん
G30さん
たかやんさん
Yadoxさん
まさとさん
ラヒラヒさん
(順不同)
大変ありがとうございました。
また、残念ながら体調不良で現地に来られなかった
山の羊さん
JHONさん
もご支援を表明していただきありがとうございました。
◆選手が『価値』を確立するには
ここまでのお話で理解できていれば簡単な話なのですが、支援を受けた人がしなければならいのは
「誰に支援されていて、この価値は大きいか小さいかを計ること」になります。
またここからも「日本選手」を全て例にしますが、
例えば日本の支援者の意識は「日本代表の応援」なので、日本人が上位を占めるような状態でトップに切り込んだとしても話題性や市場価値が非常に低くなります。
日本が最も強い競技だと、日本国内の大会の方が下手すれば価値があるわけですからね。
困難な環境の中でトップに切り込んで行く開拓者的なプレイヤーの価値が最も高いのは必然というわけです。
また、海外から支援される場合は、極地にいけばいく程価値が高くなります。
小さなフィールドは自ら情報を発信しても埋もれていくばかりですし、人を集めることも容易ではありません。
最近だとRed Bullアスリートの方々がこの辺は積極的に行っており、大きな価値の創出をしていってるんじゃないかなぁと感じております。
Bonchan's Road Trip MIYAGI無事終了しました!今回観戦勢だけで40人以上入ってたみたいで驚きました!盛り上がってくれてて嬉しかったなー。来年もやるぞ!#ボンちゃんオフ pic.twitter.com/yWAXxdGSRX
— ボンちゃん/Bonchan (@katitagaribon) 2019年11月23日
全日程終了してこれから日本へ帰ります!
— ガチくん (@gachikun0423) 2019年11月9日
南アフリカでは普段のCPTでは経験できんような事が多く、人生を変える様な体験ができました!
今後南アフリカの様なまだゲーム文化が浸透しとらん地域でこういう事をして行けたら良いなと思います!
Thank You!South Africa! pic.twitter.com/GNhL56yx8J
もしも皆さんが支援を受ける立場になったとしたら…自分には一体どういった価値があり、どういったことが支援者から求められているのかを一度整理した方が良いかと思います。
『勝利は重要な要素ではありますが、それだけが価値ではない』ということは強く主張したい次第です。
◆(後書き)私の支援者としての考え
私は一貫して「自分の内にある世界を広げること」の重要性を説きたいと考えています。
考え方の根底は以前書いた『基盤3理論』にうっすらとしたためさせていただきました。
世界を広げるのはこの内の『世界ランク理論』を確立するために確実に必要な過程(プライド分散)であって、人が自我を得るためには必要不可欠であると確信しています。
自分の中の『世界』の最小単位は家庭であり、最大単位にはおそらく歴史上まだ誰も到達していないことでしょう。
そしてこの世界の最大単位は宇宙にあるか、はたまたバーチャルの世界にあるか注目してる最中でもあります。
(先日ヨツミフレームさんの「アスタリスクの花言葉」をプレイして、バーチャルの世界が既に人生より肥大化している事実に気付かされました。)
「世界を広く持つこと」こそが面白い人生を送るコツだと私は信じます。
2020/2/2 記:mekasue