☆本文章はバーチャルマーケット3後に大半を書いて眠っていた文章ですので、少しだけ情報が古いです。その辺は注釈入れてます。
いきなりですが皆さん、バーチャルマーケットってご存知ですか?
◆バーチャルマーケットってなんだ?
バーチャルマーケットはVRChat上で今のところ年2回ペース開催されている展示会兼販売会で、バーチャル版コミケ…というよりは「みんなで開く展示会」と認識していただいていいと思う。
急速に規模が拡大している第3回となった今回は様々なコンセプトの基に構築された12のワールドに約700の個人ブースの他、協賛企業のブースも数多く見受けられた。
個人ブースで売られているのは主にVR使用を目的としたアバターや小物類といったものが中心だが、VR上に自宅を建設するためのモデルルームといった規模のデカいものもあったり、中にはVR上で音楽活動をしているバンドが楽曲を売ったり、VR上で新聞を発行してたり。
VRという"何でもあり"の空間で始まった新たな創作活動の試行錯誤の最前線という認識で良いのかもしれない。
◆VRC上で起こってきた"変化"
さて、1回、2回と回を重ねてきたこのバーチャルマーケットにある変化が起きている気がするのである。
VR上でのコミュニケーションツールは実は数多くあるのだけど、その中でVRChatが日本人にウケた理由の一つが「自キャラアバターの改変の自由度」であると考えている。
現在、VRChat用のアバター販売サイトでは大手となってる「Booth」では約2000種類(2019年9月23日現在)のVRChat向けモデルが販売されており、皆思い思い好きなアバターを購入して使用している。
デフォルトアバターも存在するが、アバターのアップロード権限が解放されたらまぁほぼ全員が乗り換えているだろう。
欧米ではかなり比率がズレている気がするが、日本や韓国といったアジア兼でのアバターは女性系アバター8割、ショタアバター1割、男または無機物等の性別判定不能なその他アバターが1割といったところである。
さぁここからが問題である。
例えば女性アバターという要素を分解すると、少女、お姉さん、ロボっ子、ケモっ子と細分化していくことが可能だが、流石に1000通りも"汎用性癖"があるわけではない。
また、現在(2019年9月23日現在)VRChat上で最も人気と思われる『幽狐属のお姉様』でもBoothのお気に入りチェック数が2000程度であり(即購入した人はチェックを付けていないと思うので参考程度だが)、VR界は徐々に拡大しているものの全体の総数はまだそれ程である。
2000種類のアバターに対して2000お気に入り…
また、こんなデータもある。
VRChatでの日本人アクティブユーザーの総数である。
それでも、ソーシャルVRゲームの中でもVRChatの人気は圧倒的で、他のVRソーシャルでは同接数は400に満たない程度なのにVRCは1万を超える日もあるようだ。ソースは、VR市場について調査している、New World Notesブログの記事。https://t.co/0SAER8oYbY
— suna (@suna_vrc) 2019年8月21日
ご覧いただいて分かるかと思うが、世界同接ユーザーでも約10000人という小規模な村社会…
中にはSteamを介して入ってない人もいるのでかなり人数はブレるとは思うが(僕もそうなので)、一応信用出来る数字と言ってもいいだろう。
とにもかくにもアバターの販売数の頭が見えてしまっている。
一人で複数アバターを購入する人達ばかりであろうが、アバターについては一旦の飽和状態に到達しつつあると結論付けてもいいのではないか。
今回のVケット3でも非常に多彩なアバターが追加されてはいたものの、かなり攻めた(性癖)のアバターや、どこかで似たような感じのアバターがチラホラ見受けられた。
各性癖においてパイの取り合いが発生しているのである。
ただ、事オタクに関してはマシュとレムと浜風とetc...が共存してるので「それほど問題無いのでは???」と言われるとそうだとも思う。
◆VRChatでのアバター使用頻度の偏りと違和感
さて、そんなアバター飽和状態において、日本人(韓国人)アバターの全体の8割を占める女性アバターの中でも圧倒的な比率を誇るのは少女あるいはそれに準じたケモっ子アバターである。
ケモっ子と一括りにするとケモナーの方々からおしかりを受けるだろうが、大半が耳だけだったりしっぽ付きだったりする1割ケモの亜人であり、これらはいわゆる「Kawaii」路線のアバター達となる。
当時私は現地にいなかったので各地に点在している資料からしか読み取れないが、割と早くから浸透してきたアバターもミコちゃんだったりミーシェちゃんだったりやはりケモっ子Kawaiiアバターがかなりの比率を占めていたと推測される。
5等身~6等身帯ではこのケモっ子Kawaii属性の選択率の高さは群を抜いており、これより高頭身となるとお姉さん属性、低頭身帯にくると無邪気系ロリっ子属性が増えていくと推測している。
さて、これまでに出てきた属性を整理しよう
Kawaiiを前提として
・少女
・ケモ(亜人)
・お姉さん
・ロリ
・ショタ
というなんともざっくばらんなカテゴライズが出来上がってしまった。
さて、VRChat上ではこれらの属性が交流することで様々な形の百合とレズとおねショタを無限に生み出し続けている。
ではその他の関係性は何故産まれないのか?
これは私の推測であるが、ザックリ言うと「かわいくない」からであろう。
勿論世の中には無機質ロボを「かわいい」と判断する人もいれば、スライムとオークの純愛を「かわいい」と判断する人もいるのは理解はしているが、所謂少数派である。
大多数の価値観でいうところの「かわいい」を体現してはいないのだ。
では何故「エロい」が蔓延してないかを考えると、それは私が以前書いた記事を読んでいただきたいのだが、
VR空間自体が「裏」ではなく「もう一つの表」の空間である以上はエロをふりまくのは基本的にノーマナーだと判断されるからである。
簡単に美少女のパンツを覗き、胸に顔をうずめれる環境ではあるものの、昨今VRセクハラ議論が巻き起こる程その辺はセンシティブな事柄となってしまう。
一方「かわいい」に関しては縛るものは何も無い。
何より「かわいい」は現実世界においても最も価値のある物でもあるのだ。
日本人は基本的にかわいい物を求め、かわいい物に癒される。
かわいい動物の動画に癒されたことの無い人間は多分いないだろう。
「表の世界」において最も力を持つものは「かわいさ」なのだ
(少なくとも日本においては)
◆インターネット老人会とその趣向の移り変わり
さて、話は変わるが個人的観測範囲では私の幼少時代は「オタクは迫害を受けるもの」であった。
それがいつしか世にいわゆるオタクが溢れるようになり、だんだんと迫害が無くなっていった。
影響としては「涼宮ハルヒの憂鬱」、「らきすた」、「けいおん」等という話題性があるアニメが立て続けに放送されると共に、若者にSNSが普及して情報共有が積極的にされていったことが大きかったのでないか?
京都アニメーション様には頭が上がらない。
ただ、個人的な観測結果としては「そもそもオタクの絶対数は変わっておらず、コンテンツとしてより面白い物にウェイ気質の人間が大移動してきた結果、許容されるようになってきただけ」と思ってるのだが、とりあえずそんなことはどうでもいい。
このような状況の中、興味深い変化が起きている。
「作品のテーマとヒロインの扱い」についてである。
2000年代中盤~後半
それこそ涼宮ハルヒの憂鬱がアニメで放映されてから非常によく聞いた言葉は
「〇〇は俺の嫁」
という文言である。
それからいつしか経った頃から全く聞かなくなり、
現在ではママを求め、異世界に転生しまくるようになり、筋トレに励むようになってしまった。
この現象は端的に
「成長する事柄しかなく万能感があった学生時代(大学を含む)を過ごしていたが、社会に出ると甘える場所は無く、自分は凡人であることを痛感すると共に自分の価値をなんとなく理解し、自らが輝けるフィールドを求めるもそんなものは現実には無く、しまいには体力すら衰えてくる」現象が順番に発生しているだけだと考えている。
まぁこの先こそが「バーチャルの肉体を手に入れることで自分の価値を回復させる(延命させる)」なので、順調に当時学生だった同世代が現実世界の厳しさを痛切に感じている最中と言えるのではないか。
◆「メスガキ」という価値観
このインターネット老人会が醸し出しているミームの中に一つ違和感がある人気コンテンツがある。
それは「メスガキ」というジャンルである。
ご存じ無い方ように説明すると
「えっちな身体付き(主観による)をしている生意気な女の子にけなされ序盤は一方的に肉体的・精神的にアドバンテージを取られるものの、最終的にはちんぽが全部ひっくり返して勝つ」という世界観のお話であり、これらの切れ端ないし全体が「メスガキ」というジャンルである。
このメスガキというジャンルは問題点がある。
竿役がイケメンマッチョだと成立しないのである。
登場人物が徹底的にけなされないと成立しないため、イケメンマッチョだとなめられず、「大人をなめるな!!」というメスガキジャンル的決まり文句が使用できない。
印籠の出せない水戸黄門には何の魅力も無い。
また、少々の立場の逆転劇ではドラマ性が無い。
やはり物語として重要なのは一発大逆転的な高低差であり、圧倒的不利から小さな突破口(ちんぽ一本)で覆す様に最高のドラマがあるのだ。
おじさん達は半沢直樹の逆転劇に興奮し、郭海王の消力(シャオリー)は極限の脱力から極限の緊張に移行することで驚くべき破壊力を持つ。
と、なると半自動的に竿役の容姿が固まってくる。
現実世界で侮蔑される要素である「デブ、ハゲ」あたりが色濃くなり、そうすると我々が常日頃お見かけする竿役おじさんが爆誕する。
ミギーはいつも正しい。
ドラマ性を生むには竿役おじさんの容姿はこのように自動的に決まってしまう。
と、するとこのような人気コンテンツなら当然VRChat内にもメスガキアバターで溢れて…
ないのである。
いや、正確にはあるのだろうが表には出てこないのだ。
◆「メスガキ」キャラクターの対象はどこに?
先に書いたように、「表の世界」おいて最も力を持つのは「かわいい」一択である。
自然と百合やレズやおねショタといった二次産物的な価値観が産まれていく。
しかしメスガキはどうだろうか?
メスガキが二次産物的価値を生むためには、メスガキともう一人どうしようもないおじさんが必要なのである。
容姿が選べるVRでそんな「価値の無いおじさん」になる必要はこれっぽっちも無い。
ウケ狙いで選ぶことはあったとしても、常にその姿でうろつくことを選ぶ人間は今のところ発生しないであろう。
現実で目の前にメスガキが発生すればメスガキとなるのだが、バーチャルで目の前に発生してもただの痴女でしかない。
したがって、バーチャルの世界に今のところメスガキは存在しない。いるのはただの痴女である。
一方、そんなVRChat内ではとんとお目にかからない3Dメスガキキャラではあるが、Twitter上ではよくお見かけし、よく拡散されている。
何故か?
それはモニターの前の我々の肉体とキャラクターの間で「メスガキ」の関係性が成立してしまっているからである。
「メスガキ」キャラの流行はインターネット老人会の一つの分岐先なのだ。
◆「メスガキパラドックス」が示すところ
半年程度VR上での活動を続けてきて、VRは容姿以外は現実と変わりないものであり、将来的なもう一つの現実となることを半ば確信してきた。
しかし、この現実では成立しうる価値観が逆にバーチャルで成立しなくなるため、バーチャル⇔現実間を行き来すると破綻してしまうというこの「メスガキパラドックス」とでも言うべき現象を見つけてしまった。
等しく職業選択の自由を与えられた際に誰もがブルーカラーな仕事をしたがらないだろう。
この「メスガキパラドックス」はこれまでおじさん達に与えられなかった部分の機会均等を与えられたが故の新時代の問題である。
昨今は急激に「平等」という大義名分の基に過去の文化が破壊されてきた。
それは喜ばしいものが大半を占めるが、中にはただの自分を棚に上げた他者への当てつけという事柄も目立つ。
バーチャルの世界で謳われる新時代の「平等」は一体どんな価値を生み、同時にどんな苦しみを生んでいくのかは今後も注目していきたいところである。