趣味に人生を捧げてきた者達の『セカンドキャリア』をどう考えるべきか ~ゲーマーと適職診断理論について~

EVO2019お疲れ様でした。BBTAG4位とか凄い上出来でしたね
色々書くべきことはあるのでしょうが、まずこれかなと思いながら書いてます。
結果報告は恥ずかしいので後でちょろっとだけ書きましょう。

 

〇良い趣味と悪い趣味の差


「ゲームをするとバカになる」という言説はまだまだ根深い。

 

いや、そもそもここで言う「バカ」って何だ?


多分一般教養を勉強し続けてきても『勉強バカ』という認定を受けるし、どんなスポーツをしても『スポーツバカ』まっしぐらだろう。


「その後に繋がらない」「スキルがつかない」ということをまとめて「バカ」という言葉に集約しているという解釈で間違ってはいないのではないか。

 

まず「その後」とは「生活が出来るか」
つまるところ「生活できるだけの金銭を生むか」どうかであろう。

 

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才能が特化してしまった人の図 『Artiste』より

 

極論すると何かを学んでもその知識を応用して生活できなければ一律「バカ」の区分に突入していく。

 

個人的な観測範囲ではあるが、サッカーや野球、テニスやバスケといったスポーツが「良い趣味」として取り沙汰されてきたのは、健康増進という面もあるだろうが、「トップ選手が莫大な金銭を稼いでいる」というのがどうやら大きいようだ。(最初広まった理由は不明瞭だが)


「上下関係の構築や他地域との交流が出来る」とかいうのがメリットの大部分を占めるんじゃないかと推測していたのだけど、昨今のeスポーツ関連報道で情報番組で取り上げられるのはただただ賞金額だけであるし、実際「ゲームで稼げる時代が来たんだなぁ」と大体を納得してしまっている人が大半であった。


こうして「その後に繋がる可能性がある」という後ろ盾を得たら、残るは「スキルがつかない」問題である。

 

これに関しては「セカンドキャリア問題」という議題で正直どんな高尚とされる趣味でも議論されてるであろう問題なので「趣味なんてそんなもんやろ」で済みそうな問題であるが、今回はここを真面目に考察していこうと思…っていたのだが既にほぼ答えを出してくれてる人々がいる。

最近DeToNator Gamingのこへうさんがいい感じの記事を書いてくれてるので参考になるだろう。

 

https://koheu.com/khu-howtobeachampion#toc29

 

2017年のEVOでときどさんが衝撃的な優勝を果たし、「東大卒プロゲーマー」という単語が一気に拡散されたのも記憶に新しいが、このこへうさんも「東大卒プロゲーマー」の一人である。

 

詳細はリンク先をじっくり読んで欲しいが、概要を書くと「『ゲームのルールを紐解いて、攻略法を探し、分析・最適化し、練習して技能を取得し、それを実戦で成し遂げる』という一連のサイクルは結局どんな物事にも適用出来るし、そのサイクルを自分がこれから挑戦する物事に適用できるようになるのが重要」なのである。

 

はい、答えが出ました!!!素晴らしい!!!

 

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他に無い才能があるってことは、ヘンってことだ。 『へんなものみっけ!』より


となるのだが、これは理論上は合ってるんだけど、実理論としては間違ってるなぁと私は推測している。

"努力の方向を間違えてる可能性"を全く考慮に入れてないのだ。

 

〇ゲーマーにおける適職診断理論


私はゲーマーの特性を大きく4種類に分けて考えている。

 

①開発型

②生産技術型

③生産型

④営業型


この特性で明確にプレイヤーを分類するわけではなく、各型は以下のような特性パラメーターである。

 

開発型…ゲームのルールを理解する能力が高く、基本的な戦略を構築したり新たな戦術を開拓することに長ける。

 

生産技術型…構築された理論を応用する能力が高く、複雑な戦略をより簡素にしたり、効率的な戦略を構築することに長ける。

 

生産型…戦略を正確に、あるいは素早く遂行する能力が高く、判断速度に優れている。

 

営業型…実戦における駆け引きが上手く、ゲームメイク能力に優れている(メンタル面を含む)。

 

この他に隠しパラメーターとしてコミュニケーション能力(主にコミュ障力)が存在していると考えているが、これは一旦置いておく(後述します)

 

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念能力みたいなものですね。

 


何が言いたいかというと、先に書いた


「『ゲームのルールを紐解いて攻略法を探し、分析・最適化し、練習して技能を取得し、それを実戦で成し遂げる』という一連のサイクル」がこの4特性の全部盛りなのであるが、これを一人で全て回せる人は確かにいいのだろうが、この4つの工程に関しては明確に得手不得手が存在している。

 

私が言う「努力の方向性を間違える」とは「自分の得意なフィールドで対戦することが出来てない」ということである。


例えばカードゲームであるとこのパラメーターがどのように影響するか

 

環境構築⇒開発
デッキ最適化⇒生産技術
プレイング⇒営業

 

となり、生産特性はほぼ生かせず、最も"強さ"として現れるのは営業特性である。

 

素晴らしいデッキを構築する人は大体同じ人なのであろうが、勝ってるのはその人とは限らない。

むしろ大会とかで上位入賞しているのを見たこと無かったりするのではないだろうか?

そういう人は単純に開発特性が高いが、営業特性は並程度なのである。

 

あるいはデッキを環境毎に微妙に調整して、圧倒的な勝率を誇っている人はいないだろうか?

そういう人は開発特性は並程度であるが、営業特性が高く、生産技術特性もかなり高い水準を持っているに違いない。


ならば私が主戦場にしている格闘ゲームはどのように影響しているかというと

 

各キャラの基本戦術および連係構築⇒開発
戦術および連携の最適化⇒生産技術
プレイング⇒生産
駆け引き⇒営業

 

となり、生産特性が最も実績として現れると考えている。

ただ、これらは「攻略がある程度煮詰まった状態で戦った場合の話」である。

 

私は新たな格闘ゲームが発売され、それが複雑なシステムに支配されているゲームであれば大体以下のような推移でゲーマーの強さが変わると推測している。

 

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格闘ゲームにおける適性の優位性について(参考図です)

 

より複雑なゲームであればあるほど推移するために要する期間は伸び、より自由度が少ないゲームであれば短い期間で推移する。


途中でアップデートが入ると内容によっては一旦リセットがかかるものの、攻略へのアプローチは変わっていないのでこ

の環境構築がより速やかに行われるだけとなる。

 

昨今の格ゲーの環境開発速度を考慮すると開発特性が強力に作用する期間は約1週間~1ヵ月、生産技術特性が強力に作用する期間が2ヵ月~半年といったところであろうか。


その後は生産特性に優れた者が圧倒的優位となり、環境がガチガチに固まっていく。

 

私はこれを陸上競技によく例える。


1週間以内のゲームを100M、1ヵ月以内のゲームを400Mの短距離走
2ヵ月~半年までのゲームを800~2000Mまでの中距離走
以降は長距離走、あるいはマラソン、時にはトライアスロンやアイアンマンレースとも言う。
またより複雑なゲームになると、ハードル走、障害物競争とまで様々である。

 

このように各パラメータによりゲームの強さが変異することから、私は発売されたゲームがいつ大会が開かれるかによってその大会を分類している。


例えば今年のEVO2019で行われた各ゲームの場合以下のように当てはまると推測している。

 

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EVO2019におけるゲームと適性

 

では私自身のパラメータはどうかというと、生産技術特性が最も高く、開発特性はそこそこ。生産特性まぁまぁ、営業特性は並といったところである。


すなわち…今年のEVOのBBTAGでは「自分の適性距離で勝負が出来た」ということになる。


"eスポーツ"としてゲームが扱われる時、絶対に言及されるのが
「ルールが毎年のように変わるものがスポーツとして成立しているのか」という言説である。

 

そもそも「eスポーツとは何ぞや」というところに言及しだすと全てが分からなくなるので、とりあえずその辺はサラっと流して「ルールが毎年変わる競技が是か非か」と言われれば私は是じゃないかなぁと考えている。


確かにその競技を頭の先から爪の先から足の先まで極めてぶつかり合う美しさはあるが、対して予想だにしないとんでも戦略が飛び交う面白さはまた違った次元に存在する。

 

また、常々思うところがある「優れた選手が優れた指導者になるとは限らない」問題がここに詰め込まれていると考えているからである。


「指導」に必要なのは個、あるいは全体を観察し開発、生産技術、営業の観点から競技にアプローチすることであるはずが、進んできた道中に乗り越えなければならない大きな障壁がほとんどなくほぼ生産適性だけで戦ってきてしまった場合、指導に必要な能力が一切養われていないのだ。

 

競技だけでなく実社会の世界においても生産能力崇拝、あるいは営業能力崇拝される傾向にあるが、せめて趣味においては開発能力、生産技術能力にスポットライトを当てて様々な才能を発掘していくべきであり、そういう場を積極的に盛り上げていきたいし楽しみにしている。

 

どうか第一線で戦うプレイヤー達は、その技術や連携を開発し最適化してきた名もなきプレイヤー達を賞賛してあげてほしい。

 


補足:コミュニケーション能力と競技について

さて、実社会で最も大事とまで言われる「コミュニケーション能力」


人それぞれ思う「コミュニケーション能力の指標」があると思うが、大体重視されるのは「人の話をしっかり理解する能力」や「適切な返答、あるいは配慮をする能力」といったところではないだろうか。

 

逆に「コミュ障」と呼ばれる状態は一体どのようなものかというと上記能力の真逆なので「とんちんかんな事を言う」「予想出来ないタイミングで刺さる言葉を言う」で総括出来るのではないか。


このコミュニケーション能力、一見競技においては高ければ高いほど営業特性の一つとして優位に働きそうであるものの、実はそうではない。


逆に「コミュ障」を敵に回すととんでもないことになるのである。

 

「コミュニケーション能力が高い」というのは「相手のやりたい事への推測が上手い」だけであり、相手が一般人であればある程度有利な読み合いを仕掛けれるが、相手もコミュニケーション能力が高ければ結局のところほぼ50:50の読み合いを仕掛け合うこととなる。


一方、コミュ障は「100%予想だに出来ないタイミングでとんちんかんな返答を刺してくる」のである。


ゲーム内で会話を試みると、全てが裏目となり逆に刺し殺されることになるのだ。

 

幸いなのがコミュ障はその特性を知ってか知らずかじゃんけんをするのが鬼のように強いキャラ(近接さえすれば強いキャラ)を使用する傾向があるため、対策として読み合いを発生させず封殺するといった行動が取れるが…

 

私は様々な投げキャラに対する"ヘイト"の理由はここに潜んでいるのではないだろうかと推測している(投げキャラだけの話では決してないのだが)。